医療・健康

化学兵器由来の有機ヒ素化合物による健康被害の分子病態を解明

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(Image by StanislavSukhin/Shutterstock)
 2003年に茨城県神栖市で生じた有機ヒ素化合物曝露に関し、当時採取された患者血漿サンプルを用いて網羅的タンパク質解析を行い、神経変性、免疫・炎症反応、細胞死に関連するタンパク質の変動を初めて特定しました。またこれらの変化が、DPAA曝露停止後も一定期間持続していることも発見しました。

 2003年、茨城県神栖市で、旧日本軍の化学兵器由来の有機ヒ素化合物(ジフェニルアルシン酸:DPAA)が井戸水に混入し、この水を摂取した住民に歩きにくさ・ふらつき・しびれ・頭痛等の症状が出現する事件が起きました。汚染水の飲用を停止して20年以上経つ今でも、多くの患者の症状は持続しています。また、同様の化学兵器が欧州を中心に投棄されており、深刻な環境問題になっています。しかし、この毒物が人間の体の中で実際にどのような毒性を持つのかはよく分かっていませんでした。

 本研究では、DPAAに曝露された患者から提供された当時の血液(血漿)サンプルを使い、血液中のタンパク質濃度を細かく測定し、長引く症状の原因を解き明かすとともに、今後の健康管理や治療に役立つ目印となるバイオマーカーを見つけることを目指しました。

 血液中にある1,034種類のタンパク質を比べた結果、患者では84種類のタンパク質の量が変化していることが分かりました。これらのタンパク質は神経変性や、炎症反応、細胞死(アポトーシス)と関連しており、そのうち34種類のタンパク質は、DPAA汚染水の飲用を中止してから時間が経っても正常には戻らず、むしろ変化が強まる傾向が見られました。これは、DPAAにより一度受けたダメージが体の中で長期間にわたり影響を及ぼしている可能性を示唆しています。この世界初の発見は、DPAA曝露患者の治療や、化学兵器遺棄による環境リスク対策に取り組む上での重要な手がかりとなります。

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
斉木 臣二 教授

掲載論文

【題名】
Human plasma proteomic alterations by diphenylarsinic acid poisoning
(ジフェニルアルシン酸の曝露におけるヒト血漿プロテオームの変容)
【掲載誌】
Environment International
【DOI】
10.1016/j.envint.2026.110536

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